多焦点眼内レンズの種類
現在国内で使用できる多焦点レンズは、その種類の増加に伴い、どれを選べばいいかわかりにくい状況です。当院では海外での実績や、学会などでの評価を踏まえ、当院がお勧めできるレンズを厳選し、採用しております。それぞれに長所、短所がありますので、わかりにくい場合は遠慮なくお問い合わせください。
【選定療養対象レンズ】
2焦点眼内レンズ
ZMB00 / ZLB00 / ZKB00
着色されていない透明な回折型多焦点眼内レンズで、遠方と近方にピントが合うように設計されています。近方のピントは30cm、40cm、50cmに合う3種類があり、ライフスタイルによって使用するレンズを選択します。非球面構造になっていることで、よりシャープな見え方が期待できます。
ポイント:ライフスタイルに合わせて3種類から選べる
焦点深度拡張型レンズ
TECNIS Symfony(テクニスシンフォニー)
シンフォニーは遠方から中間まで幅広くピントが合う焦点深度拡張型レンズです。
従来のレンズでは遠方と近方の2点にしかピントが合わないため、中間距離で視力の落ち込みがありました。このレンズはピントの合う範囲を広げ、遠方から中間まで視力の落ち込みがなく、自然な見え方を得ることができます。
ポイント:遠中的なレンズ、近くはある程度の見え方でスッキリ感重視
連続焦点型レンズ
TECNIS Synergy(テクニスシナジー)
遠方から近方35㎝までの距離に連続的に焦点が合う連続焦点レンズです。遠方から近方まで視力が低下しにくく、眼鏡に頼る頻度は最も少なくなります。ただしTECNIS Symfonyレンズに比べるとハロー・グレアはやや強くなります。
3焦点眼内レンズ
Clareon PanOptix
(クラレオン パンオプティクス)
クラレオン パンオプティクス(Clareon PanOptix)は2019年に国内で初めて承認された3焦点眼内レンズ、PanOptixの素材とデザインを進化させた新しい3焦点眼内レンズです。これまでのPanOptixの良好な屈折安定性を引き継ぎながら、透明性を追求したClareon素材にアップグレードされました。二焦点眼内レンズを改良し、遠方、中間(60cm)、近方(40cm)にピントが合う構造になっています。中間距離にも焦点が合うため、パソコンの画面や、料理の手元、カーナビなどがさらに見やすくなりました。手元や遠くの見えかたは二焦点レンズと同等です。
ポイント:遠くから近くまでより高品質な見え方、パソコンや料理の際に2焦点より快適
こんな方にお勧め⇒可能な限り若い頃の様な自然な見え方を追求したい方
FineVisionHP(ファインビジョンHP)
ファインビジョンHP(FineVisionHP)は、遠くと近くと中間距離の3ヵ所に焦点が合う【3焦点眼内レンズ】です。自費診療対象レンズとして3焦点眼内レンズ「ファインビジョン」は2014年に登場し多くの実績がございます。
今回、HPというタイプが選定療養の対象になり、より多くの患者様の選択肢としてご使用いただけるようになりました。二焦点との違いは、遠方から中間距離(約70cm)、手元(約35cm)と幅広い距離での視力の出やすさがポイントです。
ポイント
- 遠、中、近とピントの合う範囲が広い
- コントラストが高い
- ハロー・グレア(眩しさや光の滲み)が少ない
こんな方にお勧め⇒スマホや読書などの近方距離感を重視され35cm程度までしっかり見たいけれども、なるべくハロー・グレアなどの異常光視症を減らしたいという方
波面制御型焦点深度拡張レンズ
Clareon Vivity
(クラレオン ビビティ)
クラレオン ビビティ(Clareon Vivity)は「波面制御型焦点深度拡張レンズ」という新しい多焦点眼内レンズのタイプになります。遠方から中間まで幅広くピントが合います。主に「多焦点眼内レンズ特有のデメリットの軽減」、「単焦点眼内レンズのメリットを享受できる」といった特徴があります。
ポイント
- 遠方から中間、そして実用的近方距離までスムーズに連続して見える
- 単焦点レンズ並みのコントラスト感度の実現
- ハロー・グレアを最小限に抑えることができる
- 他の眼の疾患がある場合でも、挿入可能な場合がある
こんな方にお勧め⇒夜間のドライブが多い方、ゴルフなどのスポーツをする方
自費診療対象レンズ
MINI WELL READY(ミニウェルレディー)
イタリアのSIFI社が開発した、新しいオプティックデザインです。
多くの多焦点レンズが採用してきた構造とは違い、球面収差を利用し見える距離を連続的に延長(焦点深度拡張)することから、別名"オールフォーカス眼内レンズ"とも呼ばれています。
特に遠方~中間の距離の見やすさに強みがあります。また、光の眩しさ・滲み(ハロー・グレア)は他の多焦点レンズと比較しても劇的に少なく、単焦点に匹敵するのが強みです。
ポイント
- 全焦点でのコントラストの高さ
- 単焦点に匹敵するグレア・ハローの少なさ
- 遠く~中間のスッキリ感
LENTIS MplusX(レンティスエムプラスエックス)
LENTIS MplusXは、ドイツのオキュレンティス社で開発された、完全オーダーメイドの多焦点眼内レンズです。他のレンズでは作れない強度の近視や乱視にも対応可能です。また、他のレンズの50倍以上の細かい精度で作製するため、世界最高性能のプレミアムな多焦点眼内レンズとして世界的に高い評価を得ています。
ポイント
- 他のどのレンズよりも細かくオーダーメイド
- ブルーライト、紫外線カットの着色レンズ
- 構造上、他の多焦点レンズよりもコントラストが高い
- ハロー・グレア(眩しさや光の滲み)が少ない
Intensity(インテンシティ)
世界初の【5焦点眼内レンズ】インテンシティは、イスラエルのHanita社が開発したレンズです。
独自の光学技術"DLUテクノロジー(Dynamic light utilization technology)"により、他の多焦点レンズよりも取り込む光のパワーを最大限に活かす方法を研究して作られています。
この技術により、従来の2焦点、3焦点レンズに比べ、無限遠~40cmまでの全距離でスムーズな見え方が特徴です。
ポイント
- 全距離でスムーズな見え方
- 多焦点レンズの課題である"光学ロス"が他の多焦点レンズより少ない
- 明るさに応じて最適な見え方になるように設計されている
- ハロー・グレア(眩しさや光の滲み)が少ない
手術費用
選定療養は、手術費用(保険適応)に加えてそれぞれのレンズに応じて追加費用が掛かります。
選定療養対象レンズ |
追加費用(税込) |
ZMB00 / ZLB00 / ZKB00 |
片眼209,000円 |
TECNIS Symfony |
片眼209,000円 |
TECNIS Symfony(乱視用) |
片眼264,000円 |
TECNIS Synergy |
片眼335,500円 |
TECNIS Synergy(乱視用) |
片眼390,500円 |
TECNIS Multifocal Acrylic |
片眼209,000円 |
FineVisionHP |
片眼329,000円 |
アルコン Clareon Vivity |
片眼329,000円 |
アルコン Clareon PanOptix |
片眼329,000円 |
アルコン Clareon PanOptix (乱視用) |
片眼384,000円 |
※選定療養について
これまで多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は手術費用、レンズ費用の全てが保険適応外だったため高額な手術費用がかかっていましたが、2020年4月1日より、手術費用部分が保険適応となった為、実際にお支払いただく手術費用が大幅に安くなります。この選定療養は、厚労省より眼鏡装用率の軽減効果があると認められたレンズが挿入された場合のみ、その対象となります。
自費診療対象レンズ |
手術費用(税込) |
MINI WELL READY |
片眼660,000円 |
MINI WELL READY(乱視用) |
片眼710,000円 |
LENTIS MplusX |
片眼550,000円 |
LENTIS MplusX(乱視用) |
片眼600,000円 |
Intensity |
片眼770,000円 |
Intensity(乱視用) |
片眼820,000円 |
多焦点眼内レンズを決める前に知っておくべきポイント
1,ハロー・グレア
夜間に、ハロー・グレアと呼ばれる光のまわりに輪がかかって見えたり、光がギラギラとまぶしく感じたりすることがあります。
レンズの種類によってはこうした弱点が少ない、もしくは、ほとんどないものもありますのでお気軽にお問い合わせください。
2,見え方に慣れるまで時間がかかります
多焦点レンズは複雑な構造をしているため、眼で得られた像が脳になれるまで時間がかかる事があります。そのため、視力回復が単焦点レンズにくらべてゆっくりであることをご理解下さい。